【連載】ギッチョムの気仙沼だより⑧・鳴り砂の浜

 気仙沼市には、2つの鳴り砂の浜辺がある。文字通り、歩くたびに「キュッ、キュッ」と小気味いい音が出る。
 本当に音が出て、どんな音なのか?まずは短い動画を添付したので、それを確かめてから、以下の文章を読んでいただければ幸いだ。


 底がなるべく平たく、革靴のように硬めで滑らかなほど音が出やすい。さらに、砂を踏むというより、すり足に近い方が、砂がよく鳴る。
 撮影した日は、1年前のちょうど今頃。数日間、雨がなく、当日も乾燥注意報が出ていたほどで、砂が乾いた状態であればあるほど、機嫌よく「キュッ、キュッ」と、小気味いい音が出してくれる。
 撮影したのは気仙沼市の離島(現在は架橋で本土と結ばれたが)、大島の北東部にある「十八鳴浜」だ。これで「くぐなりはま」と呼ぶ。「キュッ、キュッ」→「九、九」を足して「十八」という、言葉遊びだ。

 なぜ砂が音を立てるのか?その秘密は石英。この「十八鳴浜」は細かい石英の粒で出来ており、石英の粒同士がこすれて、まさに砂が鳴く。全国には現在、20ヶ所の鳴り砂の浜があるが、気仙沼市にはもう1ヶ所、唐桑半島に「九九鳴き浜」がある。こちらは「くくなきはま」と呼ばれる。双方とも長さ200m強という小さな浜だ。
 かつては今より、ずっと多くの鳴り砂の浜があった。しかし水質汚染、訪れる人の靴によって持ち込まれる土、泥などにより石英が汚れたり、純度が下がるなどして、現在は、「鳴り」をひそめた浜も多い。
 その点、残された全国20ヶ所は、汚染から逃れた貴重な浜ということになる。
 気仙沼市の2つの浜が、残ったのは、まず石英の純度が高いこと。さらに砂が荒波や高潮などにより流出しにくい形状・場所にあることに加え、これが最大のポイントだが、人工的な汚れから守られてきたことが挙げられる。
 今日においては、環境及び観光資源保護を考え、浜に立ち入る人は靴の泥を落とすことや、キャンプや飲食、不法投棄などの禁止、さらには生活雑排水の流入の防止対策、はたまた流木など流れつくゴミや異物の除去などをしなくてはならない。
 大島と唐桑の2ヶ所の鳴り砂の浜は、有り体に言えば、アップダウンのある細い道を、双方とも10分以上かけて徒歩で行くしかない。足腰に不安がある高齢者や小さな子供連れなどでは出入りは難しい。そのちょっとした「難所」にあることが、文字通り「隠れた」名所として残った所以だ。
 もちろん大島にある海水浴場は全国でもベスト3に入る水質を誇り、入り組んだリアス海岸の折り重なる地形に守られ、東日本大震災でも、貴重な鳴り砂は守られた。その貴重さから「九九鳴き浜」とともに、震災のあった2011(平成23)年に国の天然記念物に指定されている。

 陸路は難所だが、船からだと誰でも砂浜に出入りが可能だ。ただし桟橋はない。観光と環境の両面から考えれば、鳴り砂の浜から少し離れた場所に桟橋を作れないかーと愚考する。鳴り砂の浜への桟橋設置は、どう潮の流れが変わるか分からないので、万が一にも砂が流出する事態は絶対に避けなければならないい。まさに御法度だ。
 そして体験する人が、土などを持ち込まないため、靴にはビニール製の汚染保護袋を履いてもらうか、底が平らな靴を貸し出す。もちろん、いくばくかの料金をいただき、鳴り砂保護費に充てる。
 実際、気仙沼市内の小学生などが行う体験会では、砂が鳴るたびに子供たちの歓声が青空に響いた。
 白砂青松、潮騒と鳴り砂。良き哉。

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