連載– category –
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一枚の写真「空を覗いて」・・太宰 宏恵
今回は、いつもと少し違ったイメージの写真を選ばせていただきました。晴天の昼間に、水に映る雲がかった太陽を撮影しただけなのですが、反転した世界として見える空の様子が、なんとも不思議な空気感となりました。 目の前に広がる景色や植物を直接的に撮影したものとは違って、かなり抽象的な写真にはなりますが、お楽しみいただけましたら幸いです。 太宰 宏恵 -
【連載】写真短歌(18)・・川喜田 晶子
六月は君の涙のうぶ声に重なるやうに口笛を吹く川喜田 晶子 物語や歌は、その作者だけが創造的なのではなく、その作品に、己れの内なる想いを重ね合わせ、流れ出させることのできる読者もまた、大いに能動的な表現をしているように思われます。魂の深い井戸を揺らすような作品と、この世で幾つ出逢うことになるでしょうか。 -
【連載】ギッチョムの気仙沼だより(21)「風待ちの街」
気仙沼の顔と称される気仙沼湾の最奥部。「内湾地区」と呼ぶ、その一帯は気仙沼市の「へそ」とも言える場所だ。 東日本大震災前は、離島であった大島とを結ぶ定期航路の汽船やフェリーの発着所があり、背後には気仙沼の中心市街を抱えていた。天然の良港として知られる波穏やかな入江は、リアス海岸特有の折りたたんだ海岸線の行き止まりにある。 昭和31年、内湾の入り口よりやや外側にある現在地に移転するまでは一番奥に気仙沼魚市場があり、まさに「港まち・気仙沼」の中核を形成していた。 震災後は、... -
【連載】写真短歌(17)・・川喜田 晶子
かぎりなくやはらかく闘ふ者の幸(さきは)ふ五月となりにけるかも川喜田 晶子 これでもかというほどのやわらかさで、この世界にデビューした新芽たち。彼らは私の中にも居るのだけれど、さて、居心地はよいだろうか。ここかしこで彼らに出逢うたび、そのような問いが浮かびます。いつまでも彼らがそのやわらかさでよく闘い、幸せに過ごしてほしいと願う五月。とても愛おしい季節です。 -
【連載】ギッチョムの気仙沼だより(20)「大理石海岸」
海の庭園ともいえる大理石海岸の景観 気仙沼市の景勝地の中には、今から約2億8千万年前の古生代ペルム紀に生成された石灰岩および、その後の火山活動によって火成岩が入り込み、熱によって大理石となった地層が織りなす地形がある。 潮吹岩で知られる「岩井崎」をはじめ、唐桑半島随一の観光地である「巨釜・半造(おがま・はんぞう)」などが代表的だ。 白く輝く大理石と、浸食などにより黒っぽく変色した石灰岩との対比と、自然が「彫刻」した景観が、青い海と空との見事なコントラストを描く。 その中で... -
一枚の写真「新緑の森」・・太宰 宏恵
緑眩しい季節となりました。庭のさくらんぼが実り、毎日、鳥たちがせっせとついばみにやってきます。 風に揺られて落ちたもの、鳥たちが、うっかり落としたもの、熟す前後の実が、綺麗な新芽の緑色の中でキラキラと輝いていました。 レンズを覗いて見てみると、まるで幼い頃の自分が、新緑の森に迷い込みながら歩いているような気持ちになりました。 幼い頃に見て嬉しくなった、小さな世界の記憶、皆さんの中にも大切に保管されているのかしら?などと考えながら、今月は少しだけ「メルヘン」な一枚をお届けいたし... -
【連載】ギッチョムの気仙沼だより(19)「気仙沼の発電所」
木質バイオマス発電・発熱プラント 気仙沼市には発電所がある。「発電所」は大げさかもしれないが、発電施設には間違いがない。 しかも全国でも珍しい「木質バイオマス発電」施設だ。 バイオマスとは、石油などの化石燃料を除く、動植物から生まれた再利用可能な有機性の資源を表す言葉であり、木質ということは、森林の間伐材や製材端材や木質チップなどを材料にする。 発電方法には、木質バイオマスを直接燃焼させて、発電させる「蒸気タービン方式」もあるが、気仙沼市にある施設は木質バイオマスをガス化... -
一枚の写真「春の光に」・・太宰 宏恵
突然気温が上がり、桜も一気に開花してしまいました。桜の写真を。。。。と、外へ出て撮影したものの、皆様にお届けしたいと思えるほどのクオリティに達せず、断念。 そんな中、ふと、現れた白椿。 ポツポツと、穴の空いた花びらが、春の光を通して輝いている。そんな姿が一際美しく見え、今月の一枚といたしました。 春の優しい空気感が、届きますように。 太宰 宏恵 -
【連載】写真短歌(16)・・川喜田 晶子
北向きの心に君は棲みつきて鳥のかたちに身をととのへて川喜田 晶子 定住を好む農耕民タイプか、旅を好む漂泊民タイプか。人それぞれではありましょうが、定住を好む者の心にも異郷への憧れはあり、旅を好む者の心にも定住という安らぎへの渇きは潜んでいるでしょう。渡り鳥たちが北へ旅立つ季節。彼らの旅にも、彼らの留守を過ごす湖にも、どうか幸のありますように。 -
【連載】ギッチョムの気仙沼だより(18)「気仙沼市復興祈念公園」
気仙沼湾を見下ろす、海抜60mの小高い丘。気仙沼市陣山(じんやま)に、2021年3月11日に開園した「気仙沼市復興祈念公園」。 東日本大震災から丸10年。大方の復興を終えつつあった、まさに節目の日に「祈り」のモニュメントは生まれた。 最も高い場所にあるのが、「祈りの帆(セイル)」。船体に使用されるアルミ鋼材で出来ている。高さは10m。船の帆と合掌する両手を模した。飾りっ気のない白い空間の中に入ると、透明なアクリル板の献花台があり、祈る「両手」「帆」の間から、気仙沼湾を望む...