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【連載】一枚の写真「雨の憂鬱」・・太宰 宏恵
雨の降る日は、ずっと苦手でした。髪の毛がまとまらないし、湿度がまとわりついて、空気すら重たく感じてしまう。「憂鬱。」そんなイメージが拭えず、梅雨に入ったばかりのある日、窓から雨の景色を眺めていると、「きれい。」という言葉が自然に湧き上がりました。 細かな雨が景色全体を包み込み、ベールの向こう側にぼんやり見える自然が、静かに揺れている。「柔らかで、なんてきれいなんだろう。」 雨が上がって植物に近づくと、ベールのようだった雨が、それぞれの植物の上で雫となり、小さく輝きながら、ま... -
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【連載】写真短歌(30)・・川喜田 晶子
あぢさゐといふ名の湖(うみ)の底の底 沈めて千年(ちとせ)のわが心かな川喜田 晶子 自分の心とはいえ、とてつもなく広いその場所の全てを知っているわけではなく、おそらく人は、その一割ほどを自覚し、残り九割とは、曖昧であったり想定外であったりの出逢い方をしながら、この世を旅してゆくのでしょう。「残り九割」との出逢いの中には、「おお、千年ぶり」といった類いの衝撃的なものもあるのかもしれません。 -
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ギッチョムの気仙沼だより(33)気仙沼偉人伝1北辰一刀流・千葉周作
「ちょこざいな小僧め!名を、名を名乗れ!」というセリフは、私たち昭和に生まれた男子にとっては、耳にこびりついている。 昭和30年代生まれの私にとってはテレビアニメで知ったし、それ以前、ラジオドラマで放送された際から始まったとされる。 その「小僧」が「赤胴鈴之助だっ!」と叫び返す、このやりとりがタイトルコールとなり、「剣をとっては日本一に、夢は大きな少年剣士~」という主題歌が流れる。 原作は1954~1960年に漫画雑誌「少年画報」に連載された「赤胴鈴之助」。 ストーリー... -
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【連載】一枚の写真「風薫る頃」・・太宰 宏恵
日差しが強さを増す季節、木陰に入ると心地よく、爽やかな風が吹き抜けていきます。 目的もなく、自然の中に身を置いて、そこに息づく小さな営みをぼんやりと眺めるのが、愉しみです。 風の運んで来る香、若葉の合間から溢れる光と、地面に落ちる影の模様。高い木々からすっと、差し込む光。苗の揺れる水田に映り込む、流れる雲、忙しそうに群で移動する蟻の列と、遠くに響く鳥の声。 全てが輝きをまとって、私の目の前に現れます。 情報でいっぱいのデジタル画面から目を外した先には、今しか出会えない豊かな風... -
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【連載】写真短歌(29)・・川喜田 晶子
謎は謎 わたしはわたし 闇は闇 五月の芯が囁いてをり 川喜田 晶子 〈謎〉は、いつもいつも解き明かされなくてもよいし、〈闇〉は、必ずしも〈光〉に変わらなければならないというものでもないでしょう。〈わたし〉も、おそらくなにかしらの〈答〉に閉じ込められる必要はないはず。〈五月〉という季節には、存在を囲い込もうとする枠組みへの深い闘争心の匂いがします。 -
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ギッチョムの気仙沼だより(32)岩井崎
リアス海岸である三陸地方。岩手県北部と、気仙沼市などがある宮城県北部から岩手県南部までは、やや性質を異にする。岩手県北部は断崖絶壁「海岸段丘」の景観が圧巻だが、それより以南は岩礁、離島、入り組んだ入江が連なる「沈降海岸」だ。 気仙沼市には、以前紹介した大理石海岸をはじめ、沈降海岸らしい景勝地が多い。中でも古くから気仙沼を代表するのが、今回、紹介する「岩井崎」だ。 旧本吉町と合併する前、旧気仙沼市の最南端に位置している。こちらも以前紹介した大谷海岸・海水浴場に近い。「岩井... -
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ギッチョムの気仙沼だより(31)BRT
大船渡線気仙沼〜鹿折唐桑駅間(気仙沼市新町)を走る汽車(下り)(2006年4月撮影) 鉄路を専用道に改良し、同じ区間を走るBRT(2026年4月撮影) 撮影したのは北野天満宮(お天神さん)へと市街地を結ぶ陸橋の上から。 東日本大震災で大きな打撃を受けたのは、道路にとどまらず鉄道も同様だった。 気仙沼市には、東北新幹線および東北本線と接続する岩手県一ノ関駅を結び、さらに北上すれば大船渡市にある盛(さかり)駅とを結ぶ「大船渡線」。そして宮城県石巻市にある前谷地(まえやち)駅と気仙沼駅とを結... -
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【連載】一枚の写真「アケビの花とあの距離」・・太宰 宏恵
庭のサルスベリに、 なぜか数年前からアケビの実がたくさん、ぶら下がるようになりました。今年も、それを予感させるように 小さな花がいくつも咲いています。アケビと聞くと、すぐに思い出す場面があります。小学校の帰り道。 雑木林の中に見つけたアケビを、 男の子たちが嬉しそうに採って、その場で食べていました。白い果肉の中に、ぎっしり詰まった黒い種。 あれがどうしても、小さな虫のように見えてしまって、 私は一度も口にできませんでした。少し離れたところから、 ただ眺めていたのを覚えています。大... -
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【連載】写真短歌(28)・・川喜田 晶子
東雲(しののめ)のうすむらさきの貯涙池の底に射し入るうぐひすの声川喜田 晶子 誰しも身の内に、涙を貯めている池があるかとおもいます。よく泣く人も、泣けない人も、泣かないと決めている人も、その貯涙池があふれそうになったり、波立ったりするのを感じる瞬間はあるはず。夜が明け初める頃、この池に射し入る鶯の声は、涙の深さを、そして透度を、確かめに来ているかのよう。そして、わずかに水面が揺らいで、一日が始まります。 -
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【連載】一枚の写真「交差する春」・・太宰 宏恵
桜の木の写真を撮っていると、 後ろから名前を呼ばれました。振り返ると、半年ぶりの友人が立っていました。この場所の桜は、 先週に満開を迎えたと聞いていたので、 もう散っているかと思っていたのですが、 友人も同じことを考えて、この日に来たそうです。小ぶりな桜の花びらが、 ひらひらと風に乗って落ちていくのを眺めながら、 しばらく立ち話をしました。「あと10分遅かったら、会えなかったね」 「どこかに寄り道していたら、すれ違っていたかも」そんなことを言いながら、 ほんの少しの違いで交わる人と...
