【連載】ギッチョムの気仙沼だより(18)「気仙沼市復興祈念公園」

 気仙沼湾を見下ろす、海抜60mの小高い丘。気仙沼市陣山(じんやま)に、2021年3月11日に開園した「気仙沼市復興祈念公園」。
 東日本大震災から丸10年。大方の復興を終えつつあった、まさに節目の日に「祈り」のモニュメントは生まれた。
 最も高い場所にあるのが、「祈りの帆(セイル)」。船体に使用されるアルミ鋼材で出来ている。高さは10m。船の帆と合掌する両手を模した。飾りっ気のない白い空間の中に入ると、透明なアクリル板の献花台があり、祈る「両手」「帆」の間から、気仙沼湾を望む。
 水平線。
 係留された漁船の群れ。行き交う船…。
 震災後に整備された、海を渡る「三陸道気仙沼湾横断橋」、そして離島を結ぶ「気仙沼大島大橋」。空。
静かに手を合わせ、黙祷。犠牲となった人を哀悼する。中は2人が入るのがせいぜい。夫婦、親と子ども、親しい友人…。少人数だからこその「静謐な祈り」が、そこに生まれる。 「祈りの帆」の隣には、犠牲となった方々の名前を刻んだ「銘板」がある。それぞれが住んでいた地区に向かって円形状に並ぶ「銘板」には、1人1人の名前と享年が刻んである。中には「0歳」という、悲しすぎる数字が3人の名前の下にあった。
 享年を入れた銘板は、石巻市や女川町にはなく、私が知るところ気仙沼市だけだと思う。賛否両論はあったが、災害の容赦なさに、あらためて心が痛む。込み上げる悲しさ、やりきれなさの中、「あの震災を決して忘れない」。そう胸に刻む。「0歳」をはじめ、10歳未満の銘板の隣には、まだ若い女性とおぼしき名前もあり、一層、いたたまれない気持ちになる。「祈念」する意義を、訪れた1人1人につきつける「現実」だ。

 公園内には、震災の記憶を思い起こし、語り継いでいくための5基の「伝承彫刻」が設けられている。
 5期の彫刻には、それぞれ「ごめんね」「よかったね」「海へ」「水をくみに」「三月」の名前が付けられている。
 今後も複数年かけて制作・設置していく計画となっている。

 気仙沼湾に向かい、空を仰ぐ、すくっと立つ女性。
 タイトルは「海へ」。

「ここが好き
 行きかう船とまちの彩り
 心地よい風に
 心が洗われる
 今日はあの人の命日
 あれから全く別の人生だけど
 前より笑えるようになったよ
 新しい出会いのおかげかな
 あなたはいないけど…
 私は生きる」

祈念公園は、夜間はライトアップされ、「祈りの帆」が、白く浮き上がって見える。
駐車場(無料)は、一般50台、身障者用2台、バス2台。
内湾から徒歩で約10分。
車だと、仙台方面からは三陸道で気仙沼湾横断橋を渡り、次のIC「浦島大島」で降り、10分ほど。

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