【連載】ギッチョムの気仙沼だより⑨・ツツジに包まれる徳仙丈山

「つつじ街道」手前、満開のツツジを歩く

 50万本ものツツジが自生する気仙沼市の徳仙丈(とくせんじょう)山。
5月中旬から下旬というわずかな期間ではあるが、全山が真っ赤に彩られる。その鮮やかさに加え、天気のいい日はそこかしこからツツジ越しに気仙沼湾を遠望できる。その景観もまた乙なものがある。
 リアス海岸ゆえに、海と山は近い。徳仙丈山の標高は711m。7合目にある山道入り口(標高511m)まで車で行ける。内湾で潮風を浴びた後、30分もかからず森林浴ができる山懐深い場所へと移動できる。気仙沼に住んでいると、ごく日常的なことだが、とても贅沢なことなのかもしれない。
 東日本に限らず、昨今は日本一のツツジの名所という評価も広がっている徳仙丈山に自生するのはヤマツツジとレンゲツツジ。面積は50ha。東京ドーム約10個分と広い。例年5月中旬から下旬までが7、8分咲き~満開で、見頃となっている。今年は暖冬の影響で、中旬には散り始めていた。自然のものゆえ、当たり外れがあるが、新緑の中、30分から1時間かけて散策路を巡るだけでも心身ともリフレッシュできる。
 かつては駐車場まで至る山道が途中から砂利道になり、もうもうと土煙が上がる中、車のすれ違いも難しい場所もあったが、数年前に完全舗装され、格段に行き来しやすくなった。バスでも行ける。
 登山道から第一展望台までは、高齢者にとってはややきつい上りが続くが、ゆっくり登れば、大丈夫。第一展望台で真っ赤なツツジ越しに気仙沼湾を一望し、一休み。そこからはなだらかな坂が続く。特に第二展望台に立ち寄った後に、まっすぐ伸びる「つつじ街道」は、両側をツツジが連なる名所であり、絶好の写真撮影ポイントでもある。
 徳仙丈山は、気仙沼市と旧本吉町側の境界に位置しており、9合目でまっすぐ気仙沼市側から山頂を目指すコースと、一度、本吉町側に回るコースがある。2つのコースとも、9合目からがかなりきつい。気仙沼市側は手すりや階段も整備されており、登り降りしやすい。
 本吉側は自然のままに近い急斜面が続く。雨上がりなどは滑りやすく、特に高齢者は注意が必要だ。しかし天気がよく、足場も乾いているなら、本吉側の9合目の小広場で一度、息を整え、山頂を目指すコースをお勧めしたい。登る途中、途中で本吉町側の小泉海岸、志津川方面などの景観が素晴らしいからだ。
 山頂には小さな祠がある。震災後は、地域の安寧を祈っている。帰りは下りになるので、気仙沼市側の整備された山道を選ぶのを、足腰に不安がある人には勧めたい。
 元は牧草地が広がっていた徳仙丈山。作業道、気仙沼市と本吉町の境に作られた防火帯を整備し散策路にした。故・佐々木梅吉氏など地域の自然を愛する有志が昭和51年からコツコツと続け、下草を刈るなどして小さかったツツジも大きく育てた。手弁当での作業だ。その後、「徳仙丈の自然とつつじを守る会」を結成。自然保護活動を行い、その遺志は現在でも「徳仙丈山のツツジ群生地の保護・育成を支援する会」に引き継がれた。
 気仙沼市もアクセス道の舗装をしたほか、観光協会も、PRに力を入れている。個人的には、雨は霧などでぬかるみが生じやすく、結果とした滑りやすかった散策路の一部に木片チップを敷き詰めたのは、歩きやすく、膝にも優しいので、いい改善だったと思う。
 初夏に気仙沼を訪れる機会があるならば、ぜひ足を運んでほしい。開花状況はインターネットのサイトで、ほぼリアルタイムで確認できる。山でツツジを堪能した後は、気仙沼で育てた酒米で造った地酒で、初ガツオを楽しんでほしいと願う。

山頂近くからツツジ越しに気仙沼湾を望む

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