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【連載】掌の物語③ ウサギのこと・樹 亜希
地下鉄二条城駅の近くにかわいいカフェがある。 私はそれを知らなかった。どうして今まで知らなかったのかは、色々と私的に面倒かつ、思い出したくない辛いこともあり、ここでは触れない。 堀川という川には水の流れはほぼない。 昔は水量はあったのだろうか、かなり深くて広い。車線一本ほどあり、昔から不思議だなと思っていた。なんのために? その静かな街並みには、会社やホテルが並んでいる。 自転車で行ける範囲でカフェがあるときいて、私は走り出した。 街並みに溶け込んだ、たたずまいに兎珈琲の... -
【連載】ギッチョムの気仙沼だより④・金華山とアヴァロン
地図で宮城県を見ると、仙台から東の方向に松島があり、さらに太平洋に突き出した牡鹿半島を抱える石巻市がある。その半島の東端にある島が「金華山」だ。 島全体が黄金山神社の神域で、恐山、出羽三山と並ぶ「奥州三霊場」に挙げられる。神職のみが居住する島だが、多くの参拝客が訪れるほか、「神の使い」のシカが多く生息しており、例年秋には伝統行事「鹿の角切り」が催され、観光客で賑わう。 石巻市の島だが、牡鹿半島の山並みに隠れ、市内からその姿を眺める場所は少ない。松尾芭蕉が「奥の細道」で「... -
一枚の写真 「冬の朝に」・・太宰 宏恵
寒い朝、良く見ると霜のフリルをまとった落ち葉が重なり合っていました。太陽の光がが当たれば、すぐに消えてしまうこの様子を見られたことが、とても特別に思えました。 -
【連載】写真短歌(3)・・川喜田 晶子
今宵また君の深みへ身を投げて月の素顔に逢ひにけるかも -
【連載】ギッチョムの気仙沼だより③・震災
16mの高台にあった当時の女川町立病院駐車場。消防ポンプ車の上に乗用車が載っている。高台より2m高い津波で、避難してた車ごと流された人もいた。翌日、ポンプ車から燃油を抜き取っていた。長い物資不足との戦いが既に始まっていた。2011年3月12日午前7時10分ごろ。 「ここまで被害が甚大だとは…」。みんなが口をそろえる。元日に発生した能登半島地震。地震、火災、津波。自然の猛威が複合して被災地を襲った。13年前の東日本大震災を経験した身として、その惨状と、今後、長く続くであろう復旧・復興への道... -
【連載】掌の物語② 邂逅・樹 亜希
お正月3日のお話ですが、編集部の都合で掲載が遅れました。 今日はあなたの誕生日、忘れようもないお正月の3日なんて。 卑怯だと思う、今もなお私の脳裏と心に刻んでいるんだから、あなたは私の誕生日など忘れてしまっているでしょ。 いつもより人の少ない道路の端を自転車で走りながら思う。 忘れたいのに、忘れられない記憶をフラッシュバルブ記憶という。 昨年からメンタル心理カウンセラーの資格取得講座の学習を始めて知った。大学時代には心理学を一年だけ勉強したが、バイトが忙しくてなかなか精読... -
歌劇「魔弾の射手」2月25日(日) つくばノバホール
歌劇「魔弾の射手」2月25日(日) つくばノバホール 魔弾が欲しい若い狩人マックス、彼を愛する娘アガーテ役で見角悠代が歌います。 -
見角 悠代(みかど はるよ)・音楽家への軌跡(1)
第1回 人との出会いが行先を決めてくれた この度の取材を受けるまで私は、夢中で目の前のことに取り組み、そのことでおのずと道が開けてきて、流れに乗って進むうちに音楽家になったと思っていました。ですが、お話していくうちに気がつきました。たくさんの出会いを果たし、様々な人に導かれて音楽家になったのだと。その都度、人との出会いが行先を決めてくれたのだと。 その最初にして最たる存在が母です。私が生まれたその年に、彼女は合唱団「Kaffeekränzchen」を立ち上げました。コンビニどころかスーパーマ... -
【連載】掌の物語① 白い祝福・樹 亜希
白い祝福 昨夜から冷え込むと思ったら、目覚めると窓の外は雪景色だった。 暖冬と叫ばれていた昨年末から、今年の年越しは本当に暖かかった。過ごしやすく、のんびりとしていると、長い横揺れに襲われた。地震、それもかなり大きな。 成人式が一月十五日ではなくなってから、何年が経過したのだろうか。 私は母親が虚栄心を満たすために、知り合いの呉服屋で買った、振り袖を否応もなく十八歳から着ていた。今では考えられないようなばかばかしい話だが本当なので、仕方がない。同じ大金をだすのならば何回も... -
【連載】ギッチョムの気仙沼だより② はじき猿・風車
宮城県では、正月飾りを燃やして、正月以降の日々の安寧と、農漁業や商売などそれぞれの生業の弥栄(いやさか)を願う小正月行事「どんと祭」が、各地の神社で行われる。宮城県以外では「左義長」(さぎっちょう)や「ドント焼」という呼称で行われる所も多い。