【連載】写真短歌(6)・・川喜田 晶子

うつし世をはみ出してゐるたましひよ いざまろびゆけ早苗田(さなへだ)の上 
川喜田晶子

この現世においては、どうも居心地が悪い魂の持ち主。
ともすれば魂の方が、現世の外へ外へとはみ出していってしまう。
ところが、そういう人こそ、その現世への激しい憧憬・愛着を抱いていたりするのですから、話は単純ではありません。

あどけない表情の稲の赤ちゃんたちがやさしく整列する早苗田は、胸が痛くなるような青を湛えて澄んでいます。
日本人の原風景として、〈日常〉の温かな象徴でありながら、かくも青々と澄んで、彼岸的な空と水との融合の姿を見せてくれる早苗田の上をまろびゆくならば、生き難い魂もさぞや心地よいのではないでしょうか。

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