【連載】写真短歌(8)・・川喜田 晶子

天地(あめつち)にはじめましてを言ふ前の儀式のごとく日々蕾みをり
川喜田晶子

今まさに開こうという桔梗の蕾の中には、どれほどの宝物が詰まっていることでしょう。
はち切れそうなそのふくらみを見るたびに、目が開く前の乳児の世界風景を想い描いてしまいます。
大人になってゆけば切り棄てなければならない幼児性ではなく、大人になってゆくためにこそ必要な、あらん限りの幼児性のきらめきと、おそらくは数々の前世の記憶が適切に濾過されてできた雫もまた満ち満ちて。
そのような記憶をたぐり寄せながら、今日もまたあらためて、この天地に「はじめまして」を言ってみたい気がいたします。

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