ギッチョムの気仙沼だより(31)BRT

大船渡線気仙沼〜鹿折唐桑駅間(気仙沼市新町)を走る汽車(下り)(2006年4月撮影)
鉄路を専用道に改良し、同じ区間を走るBRT(2026年4月撮影)
 撮影したのは北野天満宮(お天神さん)へと市街地を結ぶ陸橋の上から。

 東日本大震災で大きな打撃を受けたのは、道路にとどまらず鉄道も同様だった。
 気仙沼市には、東北新幹線および東北本線と接続する岩手県一ノ関駅を結び、さらに北上すれば大船渡市にある盛(さかり)駅とを結ぶ「大船渡線」。そして宮城県石巻市にある前谷地(まえやち)駅と気仙沼駅とを結ぶ「気仙沼線」がある。
 両路線とも現存するが、大船渡線は気仙沼駅から盛駅間、気仙沼線は前谷地駅と柳津駅のひと区間を除く全線が鉄路ではなくなった。今、この区間を走るのは汽車ではなく、バスだ。
 鉄道が走っていた場所を専用道とし、そこをバスが走る。この方式を「Bus Rapid Transit」という。日本では「バス高速輸送システム」と称することが多い。略して「BRT」。震災で押し寄せた津波により、線路や駅舎を含む多くが破壊された大船渡線の気仙沼〜盛間、気仙沼線の気仙沼〜前谷地間を専用道としてバスが走る。
 震災直後、地元では鉄路での復旧を望む声が大きかったが、復旧コストが桁違いに高く、もとより赤字路線であったこともあり、JRはBRTの導入を決め、関連自治体も最終的に合意した。
 鉄路からバス専用路となり、気仙沼線では6駅、大船渡線では13駅が新設された。さらに走行本数も大幅に増えた。新設された駅の中には、大船渡線の気仙沼駅の下り方面、最初の駅として最も中心市街地に近い気仙沼市役所北側に設けられた「内湾入口(八日町)駅」があり、観光客や帰省客にとって利便性が向上した。
 気仙沼線は、南三陸町から気仙沼駅間は、市街地区間を除き海岸線に沿って鉄路がある。特に気仙沼市の大谷海岸駅は震災前には「日本一、海水浴場に近い駅」としてアピールしてきた。実際、プラットホームを降りて、わずか30m先に穏やかな波が打ち寄せる海岸があった。大谷海水浴場だ。
 環境省が選んだ「快水浴場百選」にも指定されている遠浅で安全、かつ水質も最良な海水浴場だ。
 ここ「きらめきプラス」でも以前、紹介させていただいたが、今は以前の駅舎があった場所全域を嵩上げし、海が見渡せる場所に駅を移設した。駅には鉄路の代替「BRT」の駅であるにも関わらず「道の駅・大谷海岸」があり、集客施設として人気は高い。やはり海が見え、潮風が感じる場所というのは、何にも代え難い価値がある。
 もちろんBRT化のデメリットも少なくない。まず鉄路に比べて移動時間がかかる。気仙沼線でいえば、かつては気仙沼〜仙台間は、気仙沼線、石巻線、東北本線を汽車が走り、最速2時間で結んでいた。今は3時間を超える。特に南三陸町の中心部、志津川地区内では定期バスとして市街地を巡るため時間を食う。さらにBRTは鉄路に乗り入れできないことから、BRTは柳津〜前谷地間は専用路ではなく、国道と市道を走る。
 気仙沼〜柳津(BRT)〜前谷地(鉄路)でも行けるが、仙台まで行く場合は気仙沼〜前谷地(BRT)のダイヤを利用する人がほとんどだ。
 現在は、前谷地駅で石巻線上りで終点の小牛田駅へ。そこで東北本線上りに乗り換え仙台駅へ。または石巻線下りで石巻駅へ行き、そこから仙石線か、東北本線も経由する仙石東北ラインを乗り継ぐ方法があるが、乗り換えを考えただけで、とても利用する気にはならない。
 気仙沼線については、気仙沼〜志津川〜陸前戸倉(とぐら)間の通勤・通学、そして海の見えるBRT路線として旅の香辛料として選択することをお勧めする。
 大船渡線の場合、東北新幹線で一ノ関駅へ。そこで大船渡線に乗り換え、ジーゼル機関車で気仙沼駅へ。そこでBRTに乗り換え、内湾入口(八日町)駅、さらにはその先にある鹿折唐桑駅へ。ここには、かつて大型漁船が打ち上げられた場所にあり、被災した当時と現在に思いいたす場所に立ち寄るのもいい。
 実は、ここから下りは鉄路では山中を走り峠を越え、陸前高田駅へと向かっていたが、今は国道45号を走る。その先は、専用道が多く整備された。
 陸前高田、大船渡、両市とも津波で甚大な被害が出た。ぜひ一度は、BRTで走行してみてほしい。盛駅からは鉄路で見事に復旧した三陸鉄道に乗り換えることができる。

 個人的にはBRTを前向きに捉えている。仙台には全通した三陸自動車道で気仙沼から1時間半で着く。三陸自動車道区間はノンストップで走る高速バスだと最速2時間半で到着する。大船渡線で一ノ関駅から新幹線だと最速2時間。まあ新幹線代が掛かるので、庶民は高速バスを利用する人が多い。

 新幹線、大船渡線(鉄路区間)で気仙沼駅へ。そこでBRTに乗り換え、内湾入口駅または鹿折唐桑駅へ。そこから徒歩で500~600m、数分で気仙沼観光の拠点「気仙沼内湾」に到達する。
 そこから観光旅客船で大島へ。バスで2026年に開業する亀山モノレール乗り場へ。帰りはバスかタクシーなどで震災後に完成した大島大橋、さらには三陸自動車道で唯一、海を渡る気仙沼湾横断橋を通るのもいい。
 自家用車、レンターカーでのドライブ、さらには気仙沼駅で貸し出している自転車などを組み合わせると、多彩な移動手段を体験できる。BRTとモノレール、観光旅客船の3つが揃うのは全国的にも例がないと思う。
 帰りに花巻か仙台から飛行機を利用すれば、陸海空で新幹線、在来線、BRT、船、バス、モノレール…と、公共交通機関の多くを体験できる。
 できれば気仙沼市も、格安旅行プランやスタンプリレーなど、アイデアを出して、不便さを逆手に取ってほしいと思う。

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