【連載】一枚の写真「アケビの花とあの距離」・・太宰 宏恵

庭のサルスベリに、
なぜか数年前からアケビの実がたくさん、
ぶら下がるようになりました。
今年も、それを予感させるように
小さな花がいくつも咲いています。
アケビと聞くと、すぐに思い出す場面があります。
小学校の帰り道。
雑木林の中に見つけたアケビを、
男の子たちが嬉しそうに採って、その場で食べていました。
白い果肉の中に、ぎっしり詰まった黒い種。
あれがどうしても、小さな虫のように見えてしまって、
私は一度も口にできませんでした。
少し離れたところから、
ただ眺めていたのを覚えています。
大人になって、
レンズ越しに小さな花を見ていると、
あのとき笑っていた顔や、頬張る仕草が、ふっと浮かびます。
後に頑張ってアケビを食べてみたけれど、
私には決して、
男の子たちのような喜びは生まれませんでした。
でも、あのときにあったアケビと私の間の明らかな距離は、
少しだけ近づいたような気がしました。

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