君にだけ軌跡の見える火矢ひとつ つがへて秋の芯を射るなり
川喜田 晶子
その人にしか見えない世界を歌う歌。その人にしか見えない世界をその人にしか描けないように描く作品。それらが〈個〉の殻を打ち破って他者に届くのは、思えばとても不思議なことです。
この人は、自分のために歌ってくれているのではないか。自分のために描いてくれているのではないか。この人はなぜ、自分の心の扉をこんなにもやすやすと開けてしまうのだろう。
少し青春の匂いのする、そのような出逢いの甘さも苦さも掬い上げつつ、孤独は、野太くてしなやかなものに鍛え上げられてゆくのかもしれません。