【連載】写真短歌(3)・・川喜田 晶子

今宵また君の深みへ身を投げて月の素顔に逢ひにけるかも
川喜田 晶子

 満ち欠けを繰り返す月の素顔は、私たちが月と出逢う瞬間の数だけある、とも言えるでしょう。そして、満月の瞬間以外は、すべて「欠け」を抱えているわけですが、その「欠け」とは、何かを持っていないこと、足りないことではなく、ほの暗い奥ゆきを抱いていることなのだと、月はしみじみ語りかけてくるように思われます。
月の「欠け」が、ひろびろと深々と空に融けているように、人という存在のほんとうの輪郭もまた、私たちを包む世界に融けてひろがっているのかもしれません。

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