【連載】一枚の写真「曼珠沙華」・・太宰 宏恵
幼い頃、小道で初めて遭遇した曼珠沙華に、ぞっとして慌て逃げた記憶があります。 墓地の近くに咲いていたからなのか、纏う独特の妖艶な雰囲気のせいなのか、若しくは、深い紅の色彩が、子どもの私には恐ろしく見えたのか、大人になり不思議な思い出を振り返ると、実は曼珠沙華には毒が有るということを知りました。 反対に、大人になってこの花に魅了される理由は、そこにあるのかもしれません。あらゆる人間が作り出す造形物においても、完全、完璧なる何かより、密かな少量の雑味や遊びがある方が、味わい深さ...