「歩行習慣」でコロナ禍を乗り切りましょう!
「在宅医療は健幸医療」
執筆者 医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニックの長尾院長よりお便りをいただきました。
適度に歩くことでウイルスが不活化されるという内容です。
是非、歩行で免疫能を向上させましょう。
「歩行習慣」でコロナ禍を乗り越えよう!
新型コロナウイルスはたった3ケ月で世界を根底から変えました。オーバーシュート、ロックダウン、ソーシャルデイスタンス、ステイホームなど初めて聞く言葉ばかりです。密閉空間、人の密集、密接の三つの「密」が重なる場所を避けて、人と人との距離を2m以上空ける新しい生活様式はこの先も続きます。しかし自宅に閉じこもっていると強いストレスにさらされます。ストレスを受けると不安になり必ず過食になるので生活習慣病が悪化します。微熱が出る人もいて感染症と紛らわしいです。高齢者は骨や筋肉の機能が低下してロコモやフレイルが進行し、認知機能も悪化します。コロナとの闘いはマラソンと同様に長期戦になりそうですが、終息することはなく「共存」になります。私は患者さんに「こんな時だからこそ屋外をこまめに歩く」習慣づけをお願いしています。歩行本の第五弾として「歩くだけでウイルス感染に勝つ!」(山と渓谷社)を緊急出版し、歩行の意義を説いています。
高齢や糖尿病や高血圧などの持病が重症化のリスクです。しかしタバコとコロナ肺炎の密接な関係はほとんど報道されていません。志村けんさんが残してくれたメッセージはタバコの怖さです。本来、政府は「新型コロナで死にたくなければ今すぐ禁煙を」というテレビCMを流すべきです。もはやタバコとコロナの不都合な関係を国民に隠し続けることはできないと思います。
「歩行」と聞くと苦行と受け取る人がいますが、とんでもない。歩行は快楽です。運動と免疫能に関する研究では運動習慣が全くない人の寿命が短くなりますが、マラソン選手のように激しい運動を長時間続ける人の寿命も短いこともわかっています。すなわち歩行習慣と免疫能や寿命の間にはJ カーブ現象が存在し、「適度」に歩くことが大切なのです。「いい加減」でいいので毎日、こまめに歩いてください。適度な有酸素運動を習慣化することで免疫能が向上します。
歩くことで脳内ホルモンバランスも良くなります。具体的にはセロトニンやオキシトシンという幸せホルモンが増えて種々のストレスに強くなります。また便秘が解消し腸内環境が整うことでも免疫能にプラスです。ウイルスは口や鼻や目の粘膜から人体に侵入しますが、そこで門番のように立ちはだかり闘うのがIgA という免疫グロブリンです。運動習慣で局所のIgAは増加します。それでも侵入し細胞内で増殖すると炎症とともに免疫反応が起き、人によってはいわゆる「抗体」が産生されます。こうした免疫システムは体内に侵入したウイルスを感知したT リンパ球と B リンパの共同作業ですが、歩行習慣が上手に調整してくれます。
どんな時間にどれだけ歩くべきか、よく聞かれます。昼間に屋外を紫外線を浴びながらゆっくりでいいので、マスクをしてこまめに歩いてください。公園や河原やハイキングコースなど前後の人との距離が常に2m以上とれる広い場所を探して下さい。歩数に拘りませんが1万歩以上だとさすがに歩き過ぎです。歩く際には必ず紫外線を浴びて下さい。5月からは紫外線が強くなり、30分も屋外を歩けば身体や衣服についたウイルスは不活化されるでしょう。いずれにせよ消毒や換気と並んで「歩行習慣」がウイルス対策として有効であることを忘れないでください。